1.                はじめに

 今回、授業で見たビデオと、自分で選んだキーワードについての二つの文献を読み、それらの事をふまえて、レポートを作成したいと思う。私が選んだ二つのキーワードは、「ストレス・過労」についてである。まずこれら二つの言葉の定義から説明していきたいと思う。

ストレスとは、環境要因によって身体に何らかの影響が及ぼされることをいう。最近ではストレス源そのものをストレスというようになった。ストレスは、同じ要因であっても人によって感じる度合いが違うものである。

次に、過労とは、単に「疲れた」という状態ではなく、「回復できない疲れがたまり、健康障害を起こした状態」であり、その健康障害が進んで死に至るものが過労死である。最近、過労による脳や心臓の疾患にとどまらず、過労からうつ病に陥って自ら命を絶つ「過労自殺」が非常に深刻な問題になっている。

 

2.                選んだキーワード

「ストレス・過労」

 

3.論文要約

 労働時間と精神的負担との関連についての体系的文献レビュー

               藤野善久・堀江正知・廣珠山務・筒井隆夫・田中弥生

(要約)

労働環境が厳しくなっている状況の中、労働者のストレスやうつ、抑うつなどのメンタルヘルス不全が増加しており、問題となっている。メンタルヘルスに影響を与える要因として考えられているものは、労働時間、対人関係、職場における支援、報酬などである。これらのうち、労働時間は、政策的介入の目安として、多くの職場において共通に明示することが可能なため、職場における労働者のメンタルヘルス対策として取り組むべき対策としてよくあげられている。しかし、長時間労働の基準は、企業・産業保険現場での実践性を考慮したものであり、労働時間と精神的負担との関連についての科学的な確証は十分に得られていない。一方で、労働時間が、様々な労働環境要因、職業ストレス要因と関連して労働者の精神的負担や、メンタルヘルスに影響を与えることは、過去の研究からも合理的に解釈できる。そこで、労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連を検討した文献の体系的レビューを行い、労働時間と精神的負担の関連についての疫学的エビデンスを整理することを目的とした調査である。調査した結果、労働時間と精神的負担の関連性には、一致した結果が得られなかった。しかし、多くの調査で、「overwork」=「自分の能力的・精神的許容量を超えた業務(時間・ストレス・などを含む)」と精神症状との関連は一致して報告されている。また、overworkに影響を与える要因として労働時間が重要であることから、労働時間と精神的負担との関連には、実際の労働時間と同様に、overworkの評価が重要である。

「overwork」=「過労」と「overtime work」=「過重労働」の違いについて厳密に区別されずに使用されていることが多いが、仕方ないかもしれない。過労とは、自分の能力的・精神的許容量を超えた業務のことであるが、過重労働とは、決められた時間外の労働のことであると定義されているが、定義自体が曖昧なのである。このことと、実労働時間全体を必ずしも反映しないことから、過重労働は、精神的負担との関連性を評価する指標には妥当ではないと判断されている。選択バイアスについては、健康状態の好ましい人は、長時間労働にも耐えられるため、長時間労働に感受性が高い労働者が健康状態を理由に脱落している。また、同様の選択バイアスが雇用採用過程や、配置過程でも生じていると考えられる。すなわち、雇用過程において、長時間労働に比較的耐えられると判断された労働者や、長時間労働が可能と自己表明した労働者が積極的に長時間労働に就業していると考えられる。このような選択バイアスは、長時間労働と健康影響(精神的負担)の関連性を過小評価の方向に導く。また、労働者の精神的負担に影響を与えると考えられる職業性ストレス要因、労働環境、労働特性などは、職業や組織に特異的なものが多い。特に、医療従事者は、これらの点において特異的な集団と想定され、これらの結果を一般集団に適用する際には、注意が必要である。まとめると、総労働時間を把握するのに、適した妥当性のある暴露指標による検討、精神的負担を把握するための標準化された評価指標、多様な労働集団における検討が必要であり、著しく過重とされる長時間労働による精神的負担の影響評価には、労働時間が特に多い労働者を対象とした調査が必要である。

 

 

ヘルペスウイルス感染と疲労

            近藤 一博

(要約)

疲労・ストレスによるヘルペスウイルスの再活性化は、よく知られた現象である。これは、疲労時に、単純ヘルペスT型(HSV−1)の再活性化が生じることを示している。この現象は、疲労によって免疫力が低下するために、ヘルペスウイルスが、再活性化するために生じると誤解されているが、実際は、再活性化したウイルスが、免疫抑制状態では、増殖しやすいためであり、ヘルペスウイルスの再活性化は、むしろサイトカインの過剰産生により誘導される傾向がある。人のヘルペスウイルスは、現在までに8種類が発見されており、どのウイルスも初感染時にウイルスが増殖した後に増殖を停止し、ウイルス遺伝子が生涯保持される潜伏感染となる。この潜伏感染したウイルスは、何らかのきっかけで、再び活動を開始し、宿主の体内で増殖する。この状態を再活性化と呼び、ヘルペスウイルスの遺伝子活動によって自律的に行われる現象である。潜伏感染をとるウイルスには、レトロウイルスやアデノ随伴ウイルスなど、ヘルペスウイルス以外にもあるが、自律的に再活性化を生じるのは、ヘルペスウイルスのみである。ヘルペスウイルスの遺伝子の構造や大きさは多様であり、進化的な観点や生物学的性質から大きく3つのグループにわけることができる。グループごとに別々の機序を持ち、遺伝子構造や潜伏感染の機序も異なるにも関わらず、潜伏感染・再活性化という共通点を持つということは、この性質がヘルペスウイルスの生存にとって非常に重要であることを示している。ここから、何らかのストレスにより、身体機能に影響がでた状態である疲労とヘルペスウイルスの再活性化との関係を検討する。ストレスの継続による中期的な疲労状態で、ウイルスは、HHV−6、HHV−6と非常に近縁のウイルスのヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)、human cytomegalovirus(HCMV)、Epstein―barrvirus(EBV)の4種類のヘルペスウイルスを対象とした。これらは、活性頻度が高く、再活性化されたウイルスが唾液中に放出される性質があるため、唾液中のウイルスDNAを半定量的に測定し、再活性化を検出する。その結果ほとんどの人にHHV−6の再活性化がみられた。しかし、休息をとってやることで、再活性化は顕著な減少を示し、ウイルス量も減少した。また、休息をとっても、HHV−6の再活性化が見られた人では、自覚的な疲労感が強い事が判明した。これらの人は、充分な休息がとれなかったと示唆された。他の3種類のウイルスでは、この様な顕著な疲労との相関は見られなかった。これらからHHV−6は、現代人が抱える仕事のストレスによる疲労刺激で、再活性化する性質を持つと考えられる。ストレスが、中期的・長期的に続き、疲労している宿主の生存の危険を察知し、再活性化により他の宿主に移ることにより、自身の生存の確率を高くしていると解釈できる。HHV−6の再活性化から見た生理的疲労と慢性疲労症候群(CFS)との異同について述べたいと思う。CFSとは、はっきりした理由がないのに半年以上にわたり、強い疲労を感じる疾患である。慢性疲労症候群の中に、感染症、特にウイルス感染に伴って生じるものが相当の率で含まれている事から、HHV−6もCFSとの関係が疑われてきたが、HHV−6は突発性発疹に罹患した後、ほとんどすべての人の体内に潜伏感染しており、健常者からも検出されたため、ウイルスが検出されただけではCFSの原因とは言えない。CFSの患者は、疲労感が非常に強く、多くの患者では起き上がることも難しい。しかし、HHV−6の唾液中への再活性化の検出率を見てやると、健常人の休息後と同等の検出率であり、CFSの疲労感と、健常人の疲労は区別されることがわかった。これらの結果から、健常者のストレスによる疲労と、CFS患者が訴える疲労感は同じものではないことが明かとなった。CFS患者は、強い疲労感のため動くことが難しいので、動作による疲労はなく、何らかの高次神経機能の障害により、強い疲労感を感じると考えられている。最後に、HHV−6の中間状態について述べたいと思う。HHV−6は、安定した潜伏感染状態では、潜伏感染時に特異的に発現する遺伝子(潜伏感染遺伝子)からのm−RNAの発現が検出されるが、このm−RNAは、翻訳が抑制されており、前初期蛋白は作らない。これが中間状態になると、潜伏感染遺伝子の転写亢進と翻訳抑制の解除が起こり、かなり活発なウイルス蛋白の発現が起こるが、再活性化は起らない。この状態が、数日〜数週間程度維持さえた後、再活性化に向かうものからはウイルス産生が生じるものと考えられる。中間状態は、ウイルスにとっては、再活性化をより効果的に行うための準備や、ウイルス遺伝子の複製や維持に重要なのではないかと推察される。CFS患者では、この状態で発現する潜伏感染タンパク質に対する異常な免疫反応が見られることから、この中間状態の細胞が多数、しかも長期間存在することが、CFSの発症と関わっているものと考えられる。

 

4.考察

ビデオの内容とこれら二つの文献をふまえての考察をしようと思う。まず、私のレポートの内容とはそわなかったビデオで見たアスベストについて述べたいと思う。アスベスト肺は、繊維状の石綿粉じんを吸収する事により発生する。我々が普段何気なく生活している中でも吸ってしまっているかもしれないのである。続発症としては、肺癌、悪性中皮腫がみられる。人は、疲労をためると仕事の能率も悪くなるし、それだけでなく、過労死や生活習慣病をも引き起こしてしまうのである。現在でも、疲労を感じる仕組みや原因物質などはほとんどはっきりしていないのである。

 

5.まとめ

人が疲労を感じる度合いは、個人差があり、少しですごく疲労がたまってしまう人や、どんなに働いても全く疲労を感じない人などさまざまである。ストレスは疲労になり、また疲労が人の体に潜伏感染しているヘルペスウイルスなどをよびおこしてしまうのである。これらから、人それぞれ個人の性質をよく理解し、ストレスや疲労をためてしまわないよう心がける必要があると思われる。